スクランブル小型犬
「姿は俗性をあらわす」
というように、身なりや服装は、その人の個性や人格が現れるものだと思います。
僕の親友のドーベルマン（仮称）は、伊達男といいますか、
たとえシンプルなコーデでもクールに着こなしてしまいます。
それでも繊細な彼らしく、大勢の場所でも大きく目立たないような服装をしています。
「服好きな彼女がコーデしてくれんねん」
そう彼が言うに、彼の恋人であるシマリスさん（仮称）は、いつなんどき見てもおしゃれで美しいのです。
「自分に似合うもの、自分に合っているものを理解してるから、おしゃれなんやろな」
そうドーベルマンは言います。
自分を理解していれば、身なりが内面のその人らしさを際立たせ、
他人に人格面でも強い印象を与えることができます。
服装と人間には、奥深い思想が静かに流れているのを感じざるを得ません。
そういえば、駅へ向かうスクランブル交差点を歩いていると
目の前からおじいさんが可愛いワンコを連れて歩いているのが見えました。
そのおじいさんが来ていたTシャツは、
某有名ポルノサイトのパロディしたロゴが胸に大胆にプリントされていました。
「Beat box」
動画のOPともいえるあのドラム音は、
もしかしたらbeat boxで録音されているのかもしれません。
そうは言っても、おじいさんはそのTシャツが
某有名ポルノサイトのパロディTシャツであることを知っているのでしょうか。
しかしいかにも硬派なおじいさんという雰囲気で、
ふざけて笑いを誘おうとしている人ではありませんでした。
都内の駅前なので、人が多く行き交います。
おじいさんを目の当たりにして通りすぎる人々は、
その救いようのない状況にモヤモヤしたと思います。
僕もその一人でした。
おじいさんの連れたワンコは、そんなことも知らないようす。
大好きな飼い主に連れられ幼稚に歩いていました。
かわいいワンコとおじいさんとポルノサイト。
『混沌な世界だね』 僕はワンコに心で喋りかけました。
「見かけで人を判断すんなよ」
ワンコが僕にそう言って、通り過ぎていきました。
